Thatway

電話をかけた。

祖父の声が、ゆっくり耳元に届いてくる。

そうそう、これは私が撮った写真で、後ろが兄貴夫婦、隣がおばあちゃんと私。新婚の頃で、真ん中に座ってるのが毅。障子を隠すために、後ろに板を置いて撮ったんだよ。

大叔父が書いた本にも載っている写真だけれど、頂いたレジュメを見て、祖母も写っていた事に初めて気が付いた。

どことなく、妹に似ている気もする。

8人の孫に残す私の履歴書という題名で本当は本を執筆したかったらしい。

恵まれた子供たちに、こんなおじいちゃんだったと伝えたいという思いから、筆をとったそうだ。けれど、それじゃ売れないからと、出版社の方に言われ、落第社長のロシア貿易奮戦記という題名になった。

参加された方から、達磨のような人と大叔父は例えられていた。

労働組合を結成して戦った日、30代で独立開業、そしてクーデター、ソ連崩壊、すべてを失ってからの再起業、病魔との闘い。転んでも起き上がる、そんな大叔父。

今はビジネスと共に、日ロ文化交流にも力をいれている。

また、本を出版する予定もあるのだそうだ。1冊は、映画荒野の7人王様と私で主演したユルブリンナーさん(1920-1985)の本。英語とロシア語で出版されているものを、翻訳する。

あと、日本で暮らすロシアの方を取材したルポを、まとめて本にして出版するらしい。舞踊家の方、頭を丸めてお坊さんになった方、チョコレート職人の方などなど。

レジュメをめくると、戦艦ポチョムキン(1925年公開のサイレント映画)に登場する階段も載っていた。私はあの有名なシーン前後しかフィルムで見ていないけれど、この階段なんだと、ちょっとした興奮があった。

母親の手を離れて、乳母車が階段を落ちていくシーンは、アンタッチャブル(1987年公開)の映画でもオマージュとして構築されている。

アネクドートという小話も紹介してくれた。

直接的には言えないけれど、政治的なことを滑稽に風刺した話。

ロシアはユーモアにあふれた国なのだそうだ。

昔は必要物資が少ない国だったらしく、何かを買うと言えば行列ができたらしい。

マイナス20度くらいの日に、小さな少女が立っていた。

アメリカ人が少女に尋ねた。

何の行列に並んでいるの?

今、ミルクを買いに並んでます。

お母さんは並ばないの?

お母さんはパンの行列に。

お父さんは?

お父さんは宇宙飛行士で、宇宙に行ってるの。