国立劇場で歌舞伎18番の内の「毛抜」をみて

蝶人物見遊山記第249回

朝のNHKの天気予報では「災害を引き起こすかも知れない風雨が予測される」などと脅かしていましたが、それほどでもなさそうなので半蔵門で「毛抜」の小野春道館の場1幕を見物してきました。

これは悪者が磁石を犯罪の小道具に使うという世にも不思議な物語で、その難事件をまるでポワロやホームズ、いやそれ以上の推理と行動力でずびずば解決していく名探偵粂寺弾正(中村錦之助)の明朗闊達なキャラクターと黄色い脳細胞の冴えかえりが素晴らしい。

安倍蚤糞に菅官房長官を足して2で割ったような悪家老、八剣玄蕃が巨大磁石を持った萩生田某のような部下を天井に潜ませ、嫁入り前の姫君の頭髪を逆立てて縁談を壊そうとするのですが、なんと名探偵は、たまたま持ち合わせた鉄製の毛抜は宙に浮くけれど、銀の煙管は静止していることから見抜いてしまうのです。

まるで平賀源内みたい。江戸時代にもこんな科学的な知見を持つ凄い人材がいたのですね。

中村錦之助は声も演技も自信に充ち溢れ、襲名前とは見違えるようです。

こういう中堅どころながら健康で正統的な芝居をきちんと見せる役者に比べると松本幸四郎とか中村吉衛門のような妙なエリート意識にとらわれ、自分に酔っているようなキザな役者が病的な畸形に見えてくるから妙なものです。

なお本日は前座に中村隼人選手による「歌舞伎のみかた」の手際のよい解説がありました。彼は「毛抜」の本舞台の秦秀太郎役では、さしたる印象をとどめなかったのですが、若い女性にものすごく人気があるので驚きました。

   歯が痛い歯が歯が痛いなお痛いこれは虫歯かそれとも心臓? 蝶人