魂の有無についての難しい質問

 最近、30歳をとっくに過ぎた娘が人間は死んだら魂はどこへ行ってしまうのかと僕もよくわからない質問をしてきます。家内の死を体験してから急にそのことが気になってきたとのこと。僕は一応科学者の端くれですから、「うん、魂とはその個人の脳神経細胞の連絡網の相互作用の結果生まれるものだから見ることも、聞くことも、感じることもできなくなった死の時点で機能不全に陥り消失するんだと思う」とかいとうしている。その人の心そのものは死とともに体から遊離し宇宙空間を漂うというけど人の心は絶えず動いているから連携してその刹那刹那状況に応じて機能する力を失ったら何もないというのが私の考え。それでもというので、では我が家の累代墓の骨壺にお母さんのお骨がおさめられているからそのあたり探してみたらとは言っていますけど魂は我が家に戻ってきているというんです。そう思って心の安らぎが得られるのであればそれでいいんじゃないといっています。

なお、ある時代の追憶をピンポイントで確認するのは写真が一番です。その時点のその人を一番よくあらわしているから。ついでにビデオだったらその人の動きも声も残っているからねより生前の状況に近いのでは。

にもかかわらず私が桜めぐりするのは自己満足したいがためのものです。家内は永遠に返ってこない、存在そのものも過去のものを除けば消滅した。しかし自分の心の中でつながっていたい。

魂としてつながり続けたい。それは今生きている自分の心の中でです。家内の記憶が自分の脳の

どこに組み込まれているかそれはよくわかりません。しかし記憶というものは努力しなければ保存維持され続けられません。失いたくない。長い時間生きることを共にした人の追憶を。それだけなんです。私の脳に残り続ける追憶はやがて私の死とともに消え失せるでしょう。子供たちに私と家内の生きた時代がどういったかたちで脳に残っていくのか。魂とはまさしくこういう記憶のバトンタッチを

いうのではないでしょうか。